今回は東京科学大学(旧東工大)2025年度入試の物理第1問について、細かく解説していきます!問題は解説の都合上、部分的に掲載しておりますが、フルPDFが欲しい場合は大学のホームページや予備校のサイトから入手してください。

前提

[A] 台が回転しない場合

(a) 静止時の摩擦力

静止摩擦力といえば、

$$ \color{black}{f = \mu N} $$

と思う人は間違い🙅‍♀️🙅‍♀️!この公式は最大摩擦力( = 静止摩擦力の最大値)で滑り出す直前の静止摩擦力のことです。今回は、滑り出す直前かはわからないので、シンプルに斜面に対して水平方向の力のつり合いを考えていきましょう。

求める摩擦力を𝑓とする。
力のつり合いより、

$$ \color{black}{f = mg \sin \theta } $$

(b) 最下点での速さ

滑り出してからは指で押す力もはたらいていないため、物体に働く力は重力と動摩擦力、垂直抗力のみとなります。加速度が一定であるため等加速度直線運動の公式で導きましょう。

滑っている間の物体の加速度を𝑎, 垂直抗力を𝑁として水平方向の運動方程式より、

$$ \color{black}{ma = mg \sin \theta – \mu ‘ N} $$

また、鉛直方向の力の釣り合いより、

$$ \color{black}{N = mg \cos \theta } $$

最下点での速さを𝑣₀として等加速度運動の公式より、

$$ \color{black}{(v_0) ^2 – 0^2 = 2a \frac{r}{ \cos \theta } } $$ $$ \color{black}{ \therefore v_0 = \sqrt{2gr( \tan \theta – \mu ‘)} } $$

【別解】エネルギーと仕事の関係式で解くこともできる。

$$ \color{black}{[力学的エネルギーの変化] = [非保存力のした仕事]} $$

ここで、保存力とは経路によってした仕事が変わらない力のことで、高校物理では「重力」・「弾性力」・「万有引力」・「静電気力」が該当します。保存力は位置エネルギーを考えることができるため、力学的エネルギーで仕事を考えることができます!

この運動では、非保存力は動摩擦力になります。これを元に、重力による位置エネルギーの基準面を点Pとしてエネルギーと仕事の関係式を考えると、

$$ \color{black}{ \frac{1}{2} mv_0^2 – mgr \tan \theta = – \mu ‘ mg \cos \theta \cdot \frac{r}{ \cos \theta } } $$

ここで、動摩擦力の向きと物体の移動方向が逆であることに注意しましょう⚠️⚠️!そのため、動摩擦力のした仕事は負の値になります。

$$ \color{black}{ \therefore v_0 = \sqrt{2gr( \tan \theta – \mu ‘)} } $$

(c) 最下点までの移動で動摩擦力がした仕事

(b)の別解から答えは一目瞭然ですが、仕事は物体にかかる力と物体の変異の内積で、物体にかかる力に物体の変異の力と同じ向き成分をかけたものです。公式としては力を𝐹、移動距離を𝑠、力の向きと移動距離のなす角を𝜃として、

$$ \color{black}{W = Fs \cos \theta } $$

この問題では、

$$\color{black}{動摩擦力:\mu ‘mg \cos \theta } $$ $$\color{black}{移動距離: \frac{r}{ \cos \theta } } $$ $$\color{black}{なす角: \pi } $$

よって、動摩擦力のした仕事𝑊は

$$ \color{black}{W = \mu ‘ mg \cos \theta \cdot \frac{r}{ \cos \theta } \cdot \cos \pi } $$ $$ \color{black}{ \therefore – \mu ‘mgr} $$

[B] 台が少しずつ速くなりがら回転する場合

[B], [C]では台が回転し、その時の摩擦力を考える必要があります。この場合、台に対して物体が滑るのかという観点で運動を考察する必要があり、物体の運動方程式や力のつり合いを考えるときは物体と接している台上の点から見た体系で考える必要がありますね!

この時必要になってくる考え方は慣性力です。慣性力は観測者に加速度があるときに考える「みかけの力」で(物体の重力)×(観測者の加速度)になります。そして今回は、「角速度の時間変化は無視できる」とあるため、物体と接している台上の点は等速円運動しているとみなすことができます。

物体と接している台上の点の加速度は𝑟𝜔2のため、物体にかかる慣性力は、

$$ \color{black}{mr \omega ^2} $$

となります。

(d) 物体が滑り出す前の垂直抗力の大きさ

物体が台に対して静止しているため、物体と接している台上の点から見た体系を考えます。図のようになるため、垂直抗力𝑁として斜面に対して鉛直方向の力のつり合いより、

$$ \color{black}{N = mg \cos \theta + mr \omega ^2 \sin \theta } $$

(e) 物体が滑り出す向き

直感的に考えると、回転の角速度が大きくなることで物体に働く力は下のように変わっていきます。

左のように、回転の角速度が大きくなると遠心力や垂直抗力も大きくなるため、斜面の水平上向きに動く力が大きくなる。よって、台の中心から遠ざかる方向滑りだすということがわかります。

$$ \color{black}{ \therefore ⑤} $$

【別解】摩擦力の大きさを式で考えます。

(d)と同様に、静止摩擦力𝑓を回転の角速度𝜔の関数で表します。ここで静止摩擦力𝑓は斜面に対して水平上向きを正の向きとします。

斜面に対して水平方向の力のつり合いより、

$$ \color{black}{f + mr \omega ^2 \cos \theta = mg \sin \theta } $$ $$ \color{black}{ \therefore f = m (g \sin \theta – r \omega ^2 \cos \theta )} $$

左の図のようなグラフになることが、推定できます。

$$ \color{black}{ \therefore ⑤} $$

(f) 物体が滑り出すときの角速度

物体が滑り出すとき、水平下向きの静止摩擦力と最大摩擦力が一致します。

$$ \color{black}{-f = \mu N} $$ $$ \color{black}{- m (g \sin \theta – r \omega ^2 \cos \theta ) = \mu (mg \cos \theta + mr \omega ^2 \sin \theta )} $$ $$ \color{black}{ \therefore \omega = \sqrt{ \frac{ \mu \cos \theta + \sin \theta }{ \cos \theta – \mu \sin \theta } \cdot \frac{g}{r} } } $$

[C] 台が一定の加速度で回転する場合

[C]も[B]と同様に台が回転しているため、物体と接している台上の点から見た体系で運動方程式や力のつり合いを考える必要があります。「回転の角速度を無視できない」=「等速円運動ではない」ということで、物体と接している台上の点の加速度は遠心力ではないことに注意して考えましょう。

(g) 物体と接している台上の点の速度

線分OPから𝑟だけ離れた点の速度𝑣を𝑟, 𝜔で表すと、

$$ \color{black}{v = r \omega } $$

𝑟が一定であるため、微小時間𝛥𝑡における速さの変化𝛥𝑣は、

$$ \color{black}{ \Delta v = \Delta (r \omega )} $$ $$ \color{black}{ \therefore \Delta v = r \Delta \omega } $$

(h) 物体が滑り出す向き

問題文上の「線分OPから𝑟だけ離れた点」=「物体と接している台上の点」ということで、(g)からその点の加速度を考えます。台は真上から見て反時計回りのため、物体と接している台上の点の速度の向きも反時計回りとなり、大きさは

$$ \color{black}{ \frac{ \Delta v}{ \Delta t} = r \cdot \frac{ \Delta \omega }{ \Delta t} } $$

であり、台を真上から見ると慣性力や重力の水平成分は以下の図となります。

摩擦がないと仮定したとき、台を真上から見た時に物体に働く力は左の図のようになります。

摩擦がある場合、初めは慣性力が0のため静止摩擦力で静止しているが、最大摩擦力を超えた時に左の図の力の合力の向きに動き出します。

$$ \color{black}{ \therefore ⑧} $$

静止摩擦力が最大摩擦力に達するまでの3つの力の動きは以下のようになります。

(i) 物体が滑り出すときの角加速度

[B]と重力の水平成分は変わらないため、物体と接している台上の点から見た体系で台を真上から見た時の力のつり合いより、

$$ \color{black}{(mg \sin \theta )^2 + \left \{ mr \left ( \frac{ \Delta \omega }{ \Delta t} \right ) \right \} ^2 = f^2} $$

𝑓は最大摩擦力と一致するため、

$$ \color{black}{f = \mu N = \mu mg \cos \theta } $$
$$ \color{black}{ \therefore \frac{ \Delta \omega }{ \Delta t} = \frac{g}{r} \sqrt{ \mu ^2 \cos ^2 \theta – \sin ^2 \theta } } $$

あとがき

いかがでしたでしょうか?東京科学大学の問題は一見難しいように見えつつも、物理の基本的な公式で解くことができるのが特徴だと思います。問題において、どの法則が成り立つかどの公式が成立するのかを1つ1つ考え、式が立てられるようになると高得点を狙えると思います!

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